冬にしか撮れない、雪景色のカメラでの綺麗な撮り方を学びましょう!
レンズの周辺減光が起きる仕組みと対策方法
こんにちは、カナダ在住の風景写真家Tomo(@Tomo|カナダの風景写真)です。
カメラで写真を撮っていると、たまに発生する写真の四隅が暗くなる現象、みなさんも撮影した写真を見返して、不思議に思ったことがありませんか?
写真の四隅が暗くなってしまうこの現象は、周辺減光と呼ばれ撮影するときに使用するレンズの構造が原因となっていますが、その原因を知ることで、撮影での対策できるようになります。
- 周辺減光が起きる仕組み
- 周辺減光への対策方法
- 周辺減光を活かした撮影方法
写真の四隅が暗くなって悩んでいる方は、この記事を参考に周辺減光への対策をして、撮影に臨みましょう。
周辺減光が起きる仕組み
上の写真のように、写真の四隅が暗くなる周辺減光には、レンズの構造による次の2つの原因が関係しています。
- 口径食(ヴィネット)
- コサイン4乗則
難しい言葉ですが、どちらもレンズに対して斜めから入ってくる光が関係していて、口径食(ヴィネット)はレンズとカメラの構造上の問題、コサイン4乗則は光の性質が周辺減光を起こす原因となっています。
口径食(ヴィネット)
口径食(ヴィネット)とは、レンズに対して斜めに入ってくる光が、カメラのイメージセンサの四隅には十分に当たらない状態のことです。
上の写真は、レンズを正面から見た状態と斜めから見た状態の比較です。
レンズを正面から見ると、レンズの向こう側は綺麗な真円になっていますが、レンズを斜めから見ると、少し楕円形になっているのがわかるかと思います。
レンズを斜めから見た状態は、レンズに対して斜めに入ってくる光の状態と同じなので、真円から楕円となって削れた部分には、光が当たらなくなるので、それが周辺減光として写真に現れるのです。
コサイン4乗則
コサイン4乗則は光の物理現象で、ある1つの地点に届く光は、近くよりも遠くからの光ほど暗くなる現象です。
夜空身近なところでは、同じ街頭の明かりでも遠くにある街灯よりも、近くにある街灯の方が明るく見えるのと同じです。
街灯の灯りの強さはどれも同じですが、コサイン4乗則という物理現象によって、私たちに街灯の光が届くまでの距離が長くなる、遠くの街灯ほど暗く見えるのです。
光の長さの比較
上のイラストは、レンズを通ってカメラのセンサーに光が当たるまでを、簡単に表したものです。
正面から入る光に対して、斜めから入ってくるレンズの方が景色からセンサーまでの距離が長くなるので、光が届くまでの距離が長くなるほど暗くなるコサイン4乗則の影響で、写真の四隅が暗くなる周辺減光が起こるのです。
周辺減光への対策方法
口径食(ヴィネット)やコサイン4乗則によって発生する周辺減光は、次のような対策をすることで、周辺減光のない写真を撮影したり、周辺減光の量を抑えることが可能になります。
- カメラのレンズ光学補正機能を使う
- F値を絞って撮影
- 焦点距離の長いレンズを使用
- 撮影後のレタッチで補正
カメラのレンズ光学補正機能を使う
最近のデジタル一眼カメラでは、レンズ光学補正機能を使うことで、カメラ内で自動的に周辺減光を補正して、四隅が暗くなるのを防いでくれます。
使用しているカメラにレンズ光学補正機能が内蔵されている場合は、機能をONにして撮影するといいでしょう。
MENU
→カメラ
マーク→周辺光量補正
全てのレンズに対応している訳ではない
レンズ光学補正機能は、市販されている全てのレンズに対応している訳ではないので、MF(マニュアル・フォーカス)レンズや、カメラ本体にデータの無いサードパーティ製のレンズを使用した場合には、レンズ光学補正機能をONにしていても、周辺減光が発生することがあるので注意が必要です。
レンズ光学補正機能を使っても、周辺減光を補正することができない場合には、後述する方法で対策をしていきましょう。
F値を絞って撮影
同じレンズを使用していても、F値を解放で撮影するよりもF8~11などに絞って撮影する方が、口径食による周辺減光を抑えることができます。
絞り値の違いによる比較
上の比較写真は、レンズの絞りをF11まで絞った状態と解放のF2の状態で、同じ角度だけ傾けた時の比較です。
絞りF2の開放にしたレンズは、深淵であるはずの光の通り道の一部が欠けて楕円形になっているので、口径食による周辺減光が発生します。
しかし絞りをF11まで絞ったレンズは、すでに絞りによって光の通る道が狭くなっているので、どの角度からの光もセンサーに届くようになり、周辺減光が抑えられるようになるのです。
周辺減光の比較
上の写真はレンズ光学補正を使わずに、同じ焦点距離・構図でF値だけを変えて撮影した写真の比較です。
絞りをF16まで絞って撮影した写真と比べて、絞り解放のF4で撮影した写真の方が、周辺減光が大きく起きているのが’よく分かります。
焦点距離の長いレンズを使用
同じ絞り値(F値)を使用した撮影でも、広角レンズよりも焦点距離が長い望遠レンズを使用した撮影の方が、コサイン4乗則による周辺減光が発生起きにくくなります。
上のイラストは、焦点距離が短い広角レンズと焦点距離が長い望遠レンズで、正面からと斜めから入ってくる光がセンサーに届くまでの距離の違いを比較したものです。
広角レンズに比べると望遠レンズの方は、正面からと斜から入る光がセンサーに届くまでの距離とに大きな違いがありません。
このため、コサイン4乗則の影響が少なくなり、周辺減光が抑えられるようになるのです。
撮影後のレタッチで補正
撮影の段階で周辺減光を抑えることができない場合には、レタッチの段階で周辺減光を補正する方法が存在します。
この記事では写真のレタッチソフトLightroomを使った、周辺減光の補正方法をご紹介しますが、他のレタッチソフトでも同じ機能があるはずなので、使用してみてください。
Lightroomを起動したら、ライブラリ
→読み込み
でパソコン内のフォルダから、周辺減光の補正をする写真を読み込みます。
周辺減光を活かした撮影方法
写真の四隅が暗くなってしまう周辺減光ですが、写真の表現の1つとして活かした撮影方法も存在します。
周辺減光の起きた写真では、四隅が暗くなってることで、写真を見る人の視線を、自然と写真の中心に誘導する効果があります。
周辺減光の有無の比較
上の写真は、周辺減光を補正した写真と、周辺減光を意図的に増やした写真の比較です。
周辺減光を補正した写真と比べて、周辺減光を意図的に増やした写真の方が、明暗差によって自然と中央の小猿に目がいきやすくなっているのが分かります。
≫ 明暗差を使った視線誘導のある写真の撮り方はこちら
オールドレンズと周辺減光は相性が良い
周辺減光を活かした写真は、孤独感やノスタルジック感のある写真と相性が良いので、レンズの描写自体にノスタルジック感がある、オールドレンズを使った撮影との相性がとても良いです。
またオールドレンズには、現在のデジタルカメラ用のレンズよりも、周辺減光が大きいレンズも多いので、レタッチをしなくてもノスタルジックな雰囲気のある写真が撮りやすいのが大きなメリットです。
代表的なオールドレンズ
Super Takumar 55mm F1.8はオールドレンズの代表的なレンズで、カラーで撮影するだけで、自然とレトロ感のある写真が撮れ、数もたくさん流通しているので、初めてのオールドレンズにオススメの1本です。
ちなみにオールドレンズのほとんどは、現在のデジタル一眼カメラに直接取り付けることができませんが、マウントアダプターを使うことで、カメラに取り付けることが可能になります。
Super Takumar 55mm F1.8は、価格も安くカメラへの取り付けに必要なマウントアダプターも、各カメラメーカー用のものが販売されているので、オールドレンズで周辺減光を活かしたノスタルジックな雰囲気の写真を撮影したい方は、ぜひ購入して撮影を楽しんでいきましょう。
≫ Super Takumar 55mm F1.8用のマウントアダプターを探す
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