
デジタルカメラマガジン 2022年4月号[雑誌]
こんにちは、カナダ在住の風景写真家Tomo(@Tomo|カナダの風景写真)です。
デジタル一眼カメラを持っていれば誰もが一度は撮ってみたい星の写真ですが、みなさんは撮影をしたことがありますか?
とても難しそうに感じる星の写真ですが、三脚を準備していくつかのコツを抑えればエントリー機とキットレンズでも星の写真を撮ることが可能です。
エントリー機とキットレンズを使用している私の生徒さんも、これから紹介する方法で星の写真を撮っているので、ぜひ参考にしてみてください。
まず初めにエントリー機とキットレンズで撮れる星の写真は、SNSで見るような写真にはなりません。
しかし星を撮るためのカメラの設定のポイントは、エントリー機とキットレンズの組み合わせでもハイアマチュア機と高級レンズの組み合わせでも変わりはありません。
まずは今使っている機材を使って、星を撮る楽しさを実感しましょう。
星を撮るためには次の機材と準備が必要です。
星を撮るためには最低限デジタル一眼カメラと広角レンズ・三脚の3つが必要になります。
エントリー機のキットレンズにも広角ズームレンズが付いているはずなので、基本的には三脚だけ新たに購入すれば、星を撮るための機材は揃います。
星を撮るためには、まず写真を撮影するためのデジタル一眼カメラ本体が必要不可欠です。
レンズを交換できるデジタル一眼カメラであれば、ミラーレス一眼カメラと一眼レフカメラのどちらでも大丈夫です。
エントリー機で星を撮るために、広角レンズが必要です。35mm換算で24-35mm以内焦点距離で撮影可能な広角レンズを使用しましょう。
キットレンズを使用する場合、望遠ズームよりも広角ズームレンズを使用する方が、星を点の状態で明るく綺麗に撮ることが可能です。
標準ズームや望遠ズームでも星を撮る方法はありますが、綺麗に撮るにはさらに他の機材が必要になってしまいます。
星を撮るときはシャッター速度が5秒以上と遅くなるので、写真がブレないように三脚を使用します。
三脚を使用しなくても星が写る写真を撮ることも可能ですが、それでは夜景にいくつかの星が写っている程度の写真にしかなりません。
沢山の星を写真に撮るためには、必ず三脚は準備しましょう。
星の写真を撮るためには三脚は必要不可欠
星を撮影にレリーズを使用する事で、シャッターボタンを押した時に起こるカメラの僅かなブレも抑えることが可能になります。
レリーズがあれば撮影がしやすくなりますが、レリーズがない場合にはカメラ本体のタイマー機能で代用が可能です。
星を撮るためには暗い夜空の下に行く必要があるので、手元や足元を照らせるライトがあると便利です。
車のすぐ横で撮影できれば特に問題はありませんが、ヘッドランプやスマホのライト・懐中電灯があると、移動や撮影中の設定の微調整を安全におこなえます。
星を撮るためには、事前に星を撮る場所の調査とカメラの設定がとても大切になります。
星は昼夜を問わず常に私たちが見上げる空に存在しています。しかしその星を実際に目で見たり、カメラで撮るためには星が十分に見れる暗い夜、さらには場所を選ぶ必要があります。
星は人が多く住んでいる場所よりも住んでいる人が少ない場所の方が、街明かりが少なくより多くの星が撮れるようになります。
これは月明かりも同じで、月が1番明るい満月の夜よりも月が真っ暗な新月の夜の方が多くの星を撮ることが可能です。
街明かりと月明かりが少ない場所ほど、沢山の星が撮れる
ちなみに撮影場所の調査には光害マップというものを使うことで、撮影したい場所にどれだけ街明かり(光害)があるかを調べることが可能です。
カメラの設定は実際に星を撮る暗い夜空の下よりも、明るい日中か出発前の自宅で済ませるのがオススメです。
撮影現場でもカメラの設定の微調整は必要になりますが、一度設定すれば変更する必要のない基本設定は、できる限りカメラ本体を操作しやすい明るい時間帯や場所でおこなうのが良いでしょう。
エントリー機とキットレンズの組み合わせで星を撮るための設定とポイントを解析していきます。
星を撮るための基本的設定 | |
撮影モード | Mモード |
絞り | 開放(最小のF値) |
ISO感度 | ISO1600~6400 |
シャッター速度 | 5~15秒 |
WB(ホワイトバランス) | 自動 |
フォーカス | MF(マニュアル・フォーカス) |
高感度撮影時のノイズ低減 | オン |
手ブレ補正 | オフ |
ドライブモード | 2秒タイマー(レリーズがない場合のみ) |
星の写真は撮影場所の明るさや、月明かりの明るさによって違いが出るので、実際に撮影してみてからいくつかの設定を微調整する必要があります。
星を撮るためには、任意の明るさで写真を撮るためにシャッター速度とISO感度を微調整できるMモードを使用します。
夜空を明るく撮影できると写真に写る星の数は多くなるので、写真の明るさを決定する各項目(絞り・シャッター速度・ISO感度)の微調整がおこないやすいMモードを使用しましょう。
AvやTvモードでは1つの項目変更で、不必要な項目まで設定がかわるリスクがある
星を撮るときには、使用するレンズで1番明るく撮影が可能な絞り開放で撮影します。
レンズの絞り(F値)は数が小さいほど、同じシャッター速度でも明るい写真が撮れるのでそのレンズで使用可能な1番小さなF値になる絞り開放で撮影しましょう。
星の写真を撮るためには最低でも、開放の絞り値がF4以下のレンズが必要です。エントリー機に付いている広角ズームレンズは絞り開放でF3.5~4がほとんどなので、絞りを開放にすれば十分に撮影可能となります。
星灯りと夜空はとても暗いので、ISO感度をISO1600~6400まであげて絞りと同様に写真を明るくして沢山の星が撮れるようにします。
ISO感度は数字を大きくするほど写真を明るく撮影できますが、その分ノイズがでて写真の画質が悪くなります。
撮影する写真を確認しながら、ノイズが目立たない範囲で調整しましょう。
写真をスマホの小さな画面で見るだけなら、ノイズはそこまで気にならない
星を点光源として撮るためには、シャッター速度を5~15秒で撮影します。
星はゆっくりと夜空を動いているので、30秒や1分を超えるようなシャッター速度では星が動いた分だけ光跡として写真に写ってしまいます。
どちらの写真も実際にはシャッター速度の分だけ星が動いているのですが、シャッター速度が短い方が星の動く距離が短く、点光源に見えるということです。
ちなみにこの光跡を沢山繋げれば円を描くような星の写真を作ることもできますが、これには編集ソフトが必要になるので初心者向けとは言えません。
星が大きく写る標準や望遠レンズよりも、広角レンズの方が星の移動距離が少なく点光源に見えやすくなる
WB(ホワイトバランス)は自動に設定することで、目で見ているままの夜空に近い色で写真を撮ることが可能です。
WBを太陽光でも撮影することは可能ですが、街明かりが入るような撮影場所では全体的にオレンジ色になりやすいので、WBの設定は自動が1番オススメです。
とても暗く小さな点光源である星にはAFが効かないので、星の撮影ではMF (マニュアル・フォーカス)でピント合わせをおこないます。
またMF (マニュアル・フォーカス)であれば、一度星に合を合わせることができればその後もピント位置を固定したまま撮影することが可能になります。
星を撮るときにはISO感度を大きく(高感度に)するので、高感度撮影時のノイズ低減で可能な限りノイズを低減します。
ノイズを少なくすることで、写真の画質が良くなります。
星を撮るときにはカメラを三脚に固定するので、誤作動で写真がブレないように手ブレ補正をオフにしておきます。
星を撮るときにレリーズがない場合は、2秒タイマー使って撮影をおこないます。
カメラを三脚に固定していても、シャッターボタンを押す時の振動でカメラが僅かに動きます。これが写真のブレに繋がるので、シャッターを押してから2秒後に撮影を開始するタイマーを使って写真のブレを防ぎましょう。
実際に星を撮る手順を確認していきましょう。星の写真は次の手順に沿って何度か微調整をしながら撮っていきます。
カメラを固定させるための三脚を設置します。
基本的に夜空を見上げての撮影になるので、三脚の脚は必要以上に伸ばさないようにしましょう。三脚は脚を伸ばすほど風や地面の揺れをカメラに伝え易くなり、写真がブレる原因になります。
星へのピント合わせは、ライブビューモニターに映る1番明るい星に対してピントリングを回しながらマニュアルで合わせていきます。
この時ライブビュー拡大をすると、星が大きく見えて正確なピント合わせをすることが可能になります。
ピントリングを回して星が1番小さく見える位置が、星にピントの合っている場所
レンズや撮影前のピント位置よってはライブビューで星を確認できないことがあります。この時は1番遠くにある人工物や光にピントを合わせて一度撮影をしてみましょう。
撮影した写真には星が写るので、そこから必要に応じてピント位置を微調整すると良いでしょう。
ピントを合わせることができたら、ISO感度とシャッター速度を調整しながら、写真の露出(明るさ)を決めて撮影します。
この時絞りは開放で固定したままにします。
まずは露出計が真ん中にくるようにISO感度をISO1600~6400、シャッター速度が5~15秒の範囲で調整をおこないましょう。
ちなみにエントリー機とキットレンズの組み合わせでは、大まかに次のような設定になるのでこちらを基準に一度撮影をしてみるのも良いでしょう。
エントリー機での一般的な設定 | |
絞り | 開放で固定 |
ISO感度 | ISO6400 |
シャッター速度 | 10秒 |
一度星の写真を撮影したら、星のピント・明るさ・画質をチェックします。
このうちどこかに問題があれば、そこを直すようにカメラの設定を微調整しながら繰り返し撮影をして、星が沢山写る綺麗な写真を撮っていきましょう。
星の写真の微調整方法 | |
星のピントがズレている | MFでピント位置を調整 |
写真が暗い | ISO感度を上げる or シャッター速度を遅くする |
写真が明るい | ISO感度を下げる |
画質が粗い(ノイズが目立つ) | ISO感度を下げてシャッター速度を遅くする |
初めのうちは、どの問題に対してどの項目を調整すれば良いかが分かりずらいですが、撮影を繰り返すことで自然と調整項目がわかるようになってきます。
カメラで明るく撮れたと思ってもスマホに移すと少し暗くなることがあるので、必要に応じてスマホ上でも写真の明るさを調整するのがオススメです。
この記事では初心者の方が、エントリー機とキットレンズの組み合わせでも可能な星の撮り方をご紹介しました。
しかし世の中にはもっと綺麗な星の写真が溢れているので、簡潔にどのようにして撮影または写真を作成しているかを解説します。
興味がある方法があれば、ぜひ試してみてください。
星を撮るときはF値の小さな明るいレンズほど、短い時間と低いISO感度で沢山の星を撮ることが可能です。
このため一般的に星をメインで撮影している人は絞りがF2以下のとても明るいレンズを使用しています。
どちらもサードパーティレンズ会社から販売されているレンズで、キャノン / ニコン / ソニー用のレンズが販売されています。
カメラの構造上、光を受けるイメージセンサーが大きいほど高いISO感度での撮影でもノイズが出にくくなります。
同じフルサイズの中でも有効画素数などによっても、高感度撮影でのノイズの出方に違いがあるので、星をメインで撮影している人は、フルサイズで高感度撮影に適したカメラ本体を使用しています。
撮影後の星の写真は現像ソフトを使うことで、ノイズの除去や明るさの調整を綺麗に行うことが可能になります。
一般的なところでは、AdobeのLightroomやPhotoshopを使って星の写真をレタッチ(編集)することが可能です。
特にDxO PureRawというソフトは、高感度撮影で発生するノイズの除去がとても優れているので、私も星景写真の編集やレタッチ前にはこのDxO PureRawを使用して写真内のノイズを除去しています。
夜空の星は地球の自転によって常に移動しているように見えます。(厳密には地球が回っているので、星を見る私たちの位置が動いている)
この動きに合わせてカメラを自動で少しずつ動かしてくれる赤道儀を使うことで、シャッター速度を30秒や1分以上にしても星を点光源のまま撮ることが可能になります。
ただし、動く星を点光源で(動いていないように)撮れる代わりに、写真に写る星以外の風景(山や地面)はシャッター速度の分だけブレて写真に写ります。
星を点光源で撮れる代わりに風景がブレる赤道儀のデメリットを補なえるのが合成です。
赤道儀を使って撮影した写真(星がブレていない写真)と赤道儀を使わずに撮影した写真(景色がブレていない写真)の2枚をPhotoshopなどのアプリを使って合成します。
星と風景を一緒に撮る星景写真家と言われる方のほとんどは、この手法で星と風景を綺麗に合わせた写真を作っています。
単純に星を撮るだけでなく星座や天の川がどの場所でどの位置に見るとことができるのか、これを事前にアプリで調べることでオリオン座やさそり座といったわかりやすい星座の写真、また天の川の写る綺麗な星空の写真を撮ることができるようになります。
普段PモードやAvモードなどで撮影している方には難しく感じるかもしれませんが、星の撮影を通してMモードを使うことで、絞り・シャッター速度・ISO感度の3つがどのように写真の露出に影響するのかを理解できるようにもなります。
まずはお手持ちのカメラとレンズで星を撮ってみましょう!星を撮る楽しさを実感できてから、さらに綺麗に撮るためのステップに移るといいでしょう。
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