
デジタルカメラマガジン 2022年4月号[雑誌]
こんにちは、カナダ在住の風景写真家Tomo(@Tomo|カナダの風景写真)です。
被写体にグッと寄った写真が撮れるマクロレンズ。
カメラで写真を撮っている人なら誰もが名前くらいは知っているマクロレンズですが、どうやって使いこなせば良いかわからないという人も多いと思います。
マクロレンズの購入を検討している方は、この記事を参考にすることでマクロレンズの特徴や相性の良い被写体、またマクロレンズのデメリットまで確認することができるので、ぜひ購入前の参考にしてみてください。
マクロレンズは「被写体に近寄ることが可能」で、さらに「被写体を大きく撮影が可能」なレンズです。
「被写体に近寄ることが可能」と「被写体を大きく撮影が可能」の2つには、それぞれ最短焦点距離と最大撮影倍率が関係していて、マクロレンズはこの2つがどちらも通常のレンズよりも優れているレンズということになります。
マクロレンズは基本的に単焦点レンズである事がほとんどで、ズームレンズで「マクロ」と記載がある場合には、最短焦点距離が短くて被写体に近寄ることができるだけの、マクロ機能付きレンズという分類になるので注意しましょう。
マクロレンズの最短焦点距離は、同じ焦点距離の通常レンズよりも短いので、より被写体に近寄って撮影することが可能になっています。
最短焦点距離の違い
上の画像はどちらも同じ焦点距離85mmの単焦点レンズですが、通常レンズと比べてマクロレンズの方は、最短焦点距離が0.5mも短くなっているのがわかります。
つまり同じ焦点距離85mmのレンズでも、マクロレンズの方が0.5m被写体に近づいて撮影ができるということになります。
広角なレンズほど最短焦点距離が短い
通常レンズと同じで、基本的にはマクロレンズも望遠よりも広角レンズの方が最短焦点距離は短くなります。
撮影する被写体にもよりますが、狭い室内で物撮りをする場合などには、最短焦点距離が短い広角か標準のマクロレンズを選ぶと良いでしょう。
逆に立ち入りことができない花壇や、近づくと逃げてしまう昆虫などを撮影する場合には、ある程度離れた場所からでも被写体を大きく写真に撮れる望遠のマクロレンズが良いでしょう。
マクロレンズの最大等倍率は同じ焦点距離のレンズと比べて高倍率なので、同じ焦点距離で撮影した場合マクロレンズの方が被写体を大きく写真に撮ることが可能になります。
最大撮影倍率の違い
上の画像の2つのレンズはどちらも同じ焦点距離ですが、通常レンズが被写体を「0.12倍」の大きさでしか撮影できないのに対して、マクロレンズは「0.5倍」(半分の大きさ)で被写体を撮影できることがわかります。
一般的にマクロレンズと呼ばれるレンズは、この最大撮影倍率が「0.5倍」以上に設定されているので、マクロレンズを購入する際には最大撮影倍率をしっかりと確認するのが良いでしょう。
マクロレンズの醍醐味は最大撮影倍率1.0倍以上
最大撮影倍率が「0.5倍」以上であればマクロレンズになりますが、小さな世界を大きく映し出す本格的なマクロ写真を求める方は、最大撮影倍率が「1.0倍」以上のレンズを購入することをオススメします。
最大撮影倍率が「1.0倍」のレンズは、通称「等倍マクロ」とも呼ばれ、被写体を実物大のままで写真に撮る事ができるので、等倍マクロレンズで花びらや昆虫など小さな世界や生き物を撮影すると、迫力のある写真を撮る事ができます。
マクロレンズには、通常のレンズよりも写真を綺麗に撮ることができる次の3つの特徴があります。
マクロレンズは被写体を大きく写真に撮ることができるだけのレンズと思われがちですが、この3つの特徴を理解すると他の撮影シーンでもマクロレンズを活用できることが可能なのです。
マクロレンズを使うと、同じ焦点距離の通常レンズと比べて、被写体を写真に大きく撮ることが可能です。
一般的にマクロレンズの最大撮影倍率は「1.0倍」で、被写体を実物大のまま(等倍で)写真に撮ることが可能なので、花や雑貨などの小さな被写体を細部までハッキリと見せることもできます。
写真での大きさの違い
どちらも同じセンサーサイズ、同じ焦点距離で10円玉を撮影していますが、最大撮影倍率の違いで写真に写る10円玉の大きさにかなりの違いがでていることがわかります。
被写体に近寄って画角いっぱいに大きく撮影する時に限定されますが、マクロレンズは通常のレンズよりも背景がボケやすくなります。
写真のボケには被写体とカメラの距離も関係していて、この2つの距離が近いほど背景はボケやすく、逆に距離が遠いほど背景はボケにくくなります。
切り取って拡大した写真よりもボケが大きい
通常のレンズで撮影をしてから被写体だけを大きく切り取ったものと比べると、マクロレンズで被写体に近寄って同じ大きさに撮影した写真の方がボケが大きくなります。
ボケの比較
上の2枚はどちらも絞りを「F8」に設定して、それぞれのレンズで最も近寄ることができる距離で撮影をしていますが、マクロレンズの方が文字が大きくボケているのがわかります。
被写体に近寄って撮影ができるマクロレンズに比べて、被写体から離れて撮影をする必要がある通常のレンズでは、同じ大きさに切り取った時にボケが少なくなってしますのです。
少しややこしいですが被写体から離れて撮影するような場合、つまりマクロレンズと通常レンズどちら切り取りをしない同じ構図の場合は、「F値」と「焦点距離」が同じである限りボケ感に違いはありません。
切り取りをしない場合
上の2枚の写真はどちらも切り取りなしで同じ構図になるように、「F値」と「焦点距離」を同じ設定で撮影をしているので、マクロレンズと通常レンズでボケ感に違いは見られません。
つまりマクロレンズは通常のレンズよりも被写体に近寄って撮影ができるので、被写体に近寄って大きく写す場合には背景ボケがとても大きなるということです。
マクロレンズは被写体を大きく写真に撮ることができるので、その分解像度も高いレンズが多くなっています。
また広角レンズのように焦点距離が短いレンズのデメリットである「周囲の歪み」も発生しづらいので、風景写真でもその効果を発揮してくれます。
とても汎用性が高いマクロレンズですが、被写界深度が浅いことで次のようなデメリットが存在します。
マクロレンズを使用しての撮影、特に被写体に近寄って撮影するクローズアップ撮影では、カメラが少し前後に動くだけでもピントの位置がズレてしまいます。
絞りを開放でクローズアップ撮影をする場合には、三脚を使用してカメラが前後に動かないようにすると良いでしょう。
またマクロレンズは背景をボカしやすい反面で、全体にピントを合わせる「パンフォーカス」での撮影ができない場合もあります。
クローズアップでもパンフォーカスにした写真を撮影したい方は、ピント位置をズラした数枚の写真を使う「被写界深度合成」で対応すると良いでしょう。
「被写体を大きく撮れる」「背景をボカしやすい」「高解像度」とても汎用性の高いマクロレンズは、次のような被写体ととても相性が良いです。
誰もが最低でも1つは普段から撮影している被写体が当てはまるのではないでしょうか?
そんなマクロレンズを使って撮れる写真を、被写体ごとにご紹介していきます。
マクロレンズを持ったらまずは撮るべき被写体で、花や植物の全体を写すのではなく1枚の花びらや葉っぱをクローズアップで撮影するのがオススメです。
マクロレンズで花弁や雄しべ・雌しべ、紅葉の葉脈などに近寄ると、普段私たちが見ることのできない花や葉っぱの1面を写真に撮ることが可能になりますよ。
花によってくる小さな蝶や蜂などはもちろん、小さくて普段は目にも止まらないようなてんとう虫や蟻なども、マクロレンズを使うことで大きく写真に撮ることができます。
動いている昆虫や小動物に近寄って撮ることは難しいので、焦点距離が90mm以上の中望遠マクロレンズを使って、花や植物に止まっている昆虫などを狙うと良いでしょう。
レストランやカフェでは、マクロレンズを使うことで食べ物を高解像度で美味しさ(シズル感)の伝わる写真に撮ることができます。
レストランやカフェなどの狭い室内での撮影には、最短焦点距離が短い広角か標準マクロを使うと良いでしょう。
簡単に背景をボカしやすいマクロレンズは、人物を撮るポートレート撮影でも活躍をしてくれます。
マクロレンズで綺麗に背景をボカすことで、主題となる人物がハッキリと目立つ写真を撮ることが可能になります。
また高解像度なマクロレンズを使うことで、モデルの肌や髪などを綺麗に撮影する事が可能なので、通常のポートレートレンズと同じ、焦点距離100mm前後の中望遠マクロを選ぶと良いでしょう。
野外で撮影することが多い花や虫の撮影と一緒に、風景もマクロレンズで撮影すると良いでしょう。
特に木々が立ち並ぶ森林の中や並木道の写真は、周辺の歪みを抑えて木々を真っ直ぐに撮ることができるのでオススメです。
マクロレンズは通常のレンズと同様に、焦点距離によって大きく3つに分類されています。
焦点距離によって使い方にも違いがありますが、初めてマクロレンズを購入する方には、1番汎用性が高く扱いやすい中望遠マクロがオススメです。
今回は初めてのマクロレンズ購入を考えている初心者のために、サードパーティーメーカーの「TAMRON(タムロン)」から発売されている、低価格で高性能なマクロレンズをご紹介します。
タムロン伝統のマクロレンズで、通称「タムキュー」の名前で知られている愛用者が多いマクロレンズです。
新品でも3万円前後と低価格にも関わらず、最大撮影倍率は1.0倍で被写体を等倍(実物大)で、かつ柔らかで美しいぼけの写真を撮ることができます。
またレンズ自体も軽量となっているので、カメラに取り付けても重くなり過ぎないので、手ブレ補正がない面をカバーしています。
スペック
最大撮影倍率 | 1.0倍 |
最短撮影距離 | 0.29倍 |
焦点距離 | 90mm |
F値 | F2.8 |
フィルター径 | 55mm |
手ブレ補正 | ー |
対応カメラメーカー | Canon / Nikon / Sony / PENTAX |
マクロ撮影入門に購入、古いタイプのレンズですが噂通り良い画を吐き出してくれます。
ボディに手ぶれ補正の無いNikon D7100で撮影しましたが、レンズに手ぶれ補正機構無くても、手持ちですが良く撮れました。
画質、特に絞りが決まった時のボケ具合が最高。
フォーカスはほとんどがマニュアルですが、AFの際には補助的に利用。
AFにてピントを合わせる際うるさい、合うまでに時間がかかる。
・ライブビューで合わせると最後の微調整でさらに数秒もたつく。
・構造的にAFとMFの切替の時にピントがずれる。
このマクロレンズは古いモデルですが、2016年には後継機として手ブレ補正の付いた新しいモデルが販売されています。
少し値段が高くても手ブレ補正の付いたマクロレンズが欲しいという方は、最新のモデルを検討するのも良いでしょう。
手ブレ補正付きモデル
Canonのおすすめマクロレンズ
Canonのおすすめマクロレンズを、カメラの種類別にご紹介しているので、他のマクロレンズにチェックしたいという方はリンクからチェックできます。
被写体を大きく撮影できるだけと思われがちなマクロレンズですが、「背景をボカせる」「高解像度」といった、大きな付加価値が付いてるとても汎用性の高いレンズです。
マクロレンズが1本あるだけで、「クローズアップ撮影」から「ポートレー」「フード」「風景」など、あらゆるジャンルで良い写真を撮ることが可能なので、最初の単焦点レンズとして購入するのも良いでしょう。
まだマクロレンズを持っていないという方は、『マクロレンズの選び方とCanonおすすめレンズ8選』の記事で、ぜひ自分にあったマクロレンズを探しましょう。
この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!
質問・コメント