
デジタルカメラマガジン 2022年4月号[雑誌]
こんにちは、カナダ在住の風景写真家Tomo(@Tomo|カナダの風景写真)です。
突然ですが、この2つの写真でどちらの方が鳥が目立って見えますか?
ほとんどの方が、右のむらさき色をした鳥の写真と答えたと思いますが、これには明確な理由があり、インスタグラムなどで目を惹く写真には、上の比較と同じ要素が関係しているのです。
主題を目立たせたり、色鮮やかでメリハリのある写真を撮るためには、色相と補色の関係を意識して撮影をすることが必要です。
デジタル一眼カメラでの撮影に慣れてきたら、次のステップとして補色を意識した、メリハリのある写真を撮影してみましょう。
色相とは赤、青、緑といった色の違いを表す言葉で、彩度と明度と合わせた色の3属性の1つでもあります。
またこの赤、青、緑といった色の違いを円状にまとめたものを色相環といい、この色相環を見ることで様々な色同士の関係を明確に知ることが可能になります。
上の図のように、色は同じ赤でも真っ赤な色とピンクがかった赤色など、実は微妙に違いがあり、その違いを表しているのが、色相になります。
そして色相を円状にした色相環で、ある特定の色と反対側にある色は補色と呼ばれる、正反対の色であることを示しています。
ある特定の色と正反対の色を表す補色は、ある特定の色を引き立てる役割があります。
色相環には載っていませんが、1番わかりやすい例では白と黒は正反対の色なので、白い紙の上に黒色のペンで絵を描くと、黒色で描かれたその絵はとても目立つようになります。
これと同じことを、白と黒以外でもできるのが色相環での補色を使ったテクニックです。
補色の影響
もう1度初めの比較写真に戻ってみましょう。
左の写真では、緑色の葉っぱに対して青緑色の鳥が写っていますが、これを色相環でそれぞれの位置を確認すると、緑色と青緑色の関係はとなり同士の色ということがわかります。
逆に右の写真では、緑色の葉っぱに対してむらさき色の鳥が写っていて、これを色相環でそれぞれの位置を確認すると、緑とむらさき色はほとんど正反対の位置にある補色の関係にあることがわかります。
色相環を使って色相の関係性が把握できれば、あとは撮影する現場で補色を意識した構図や被写体と背景選びをしながら写真を撮っていきましょう。
特にテーブルフォトや風景とポートレートを合わせて撮るような場合には、積極的に補色となる色を用意して撮影することで、主題がハッキリとする写真が撮れるようになりますよ。
風景の中で、毎回補色を探して撮影することは難しいですが、紅葉の季節には真っ赤な紅葉を、補色となる緑が残る葉っぱを背景にして撮影することで、補色による色のコントラストが生まれ、紅葉が目立ちやすくなります。
≫ コントラストとは
また菜の花の季節には、黄色の菜の花を補色となる青空を背景に選んで撮影することで、対照的な色である青空に黄色の菜の花が映える写真を撮ることができるようになります。
逆に主題のある写真でも、背景に色相環で隣同士になるような色を使って撮影すると、主題がハッキリとしないどこを見たら良いかわからない写真になってしまうので、気をつけるようにしましょう。
補色を意識してない写真
上の写真は、背景に主題となる紅葉と同系色のオレンジ色を選んで撮影した写真で、背景をボカしてありますが、それでも主題となる真っ赤な紅葉がどこのあるかわかりづらい写真になってしまいました。
紅葉の木全体を撮る場合には、同系色が背景でもあまり問題はありませんが、上の写真のように主題がハッキリとしている場合には、補色となる緑色やそれに近い色を背景に選んで撮影をしていきましょう。
朝焼けや夕焼けにも補色がある
自然が作り出す色彩の中には、誰もが見惚れるような綺麗な朝焼けや夕焼けのグラデーションの中にも、写真にメリハリを与えることができる補色の関係が隠れています。
上の写真は、空気の澄んだ日の朝焼けのグラデーションを撮影した写真です。
このように綺麗なグラデーションが出ている日は、地平線近くのオレンジ色と、上空の青い空がそれぞれ補色の関係となるため、メリハリのある写真になります。
≫ 朝焼けを撮るための設定とコツはこちら
風景の中には、色相環で見たときに隣同士や、近い色の関係になる色同士がたくさん隠れているので、このような関係にある色を構図に入れて撮影すると、全体的に調和が取れた写真を撮ることが可能になります。
色の調和が取れている写真は、見ていて気持ちが落ち着くので、主題がハッキリとしている写真よりは、構図全体で1枚の写真とする場合にオススメな色相の使い方です。
例えば、木々の緑色と空の青色は、色相環で見ると比較的近い色の関係になっているので、色の調和が取れている見ていて落ち着く景色ということになるのです。
色相環で色同士の関係を把握することで、構図と明るさに加えて色彩を意図的に組み込んだ写真が撮れるようになっていきます。
補色を使って、主題がハッキリとしたメリハリのある写真を撮るのか、近い色の関係同士を使って全体的に調和の取れた写真を撮るのか、撮影の現場で色彩についても意識して撮影をしていきましょう。
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